- 全脳腫瘍の中では1%とされている比較的珍しい良性腫瘍です。
- エピデルモイドと呼ばれる腫瘍です。
- 基本的には神経ができる過程の不具合で起こる先天的な病気になりますが後天的にも発生します。
- 大きくならないと症状が出ないため中年で発症する疾患です。
- とてもゆっくり大きくなるため、症状が出て来るのは20歳~40歳の成人にみられます。
- 脳のどの部位にもできる腫瘍ですが、小脳橋角部に発生するものが50%ともっとも多いです。
- のう胞の中身は垢ですが、腫瘍の本体は外側の上皮成分のみです。
症状
ゆっくりと大きくなるため
- 腫瘍が大きくなる事で頭痛、嘔吐
脳神経に絡むようになれば、脳神経の症状が見られます
- ものが二つに見える、顔が痺れる(痛み)
- 顔面の麻痺やけいれん
- 耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴り
大脳や小脳、脳幹による症状
- ふらつき、めまい
- てんかん発作
- 認知症状
- 稀に無菌性髄膜炎(のう胞の中身が外に漏れることで起こる髄膜炎)(aseptic meningitis )などがあげられます。
診断
- CTではのう胞の中身が黒っぽく、脳脊髄液と同じように見えるため、クモ膜のう胞と同じように見える事があります。
- 一部骨のように見える石灰化は10%〜25%で見られます。
- MRI検査では、拡散強調画像MRIを行うことではっきりと腫瘍成分がわかります。
上の写真は頭痛と認知症状で来られた50代の男性のMRI面像です。左のT2強調MRI画像になりますが、中央部分(小脳橋角部)に白っぽく見えているのが腫瘍ですが、一見すると見逃しそうな所見です。右の画像が拡散強調画像MRIになりますが、くっきりと白く腫瘍が描出されているのがわかります。この患者さんは、症状に変わりがありませんので経過を見てますが、10年間腫瘍は全く変わらずにいます。
治療
- 症状が進行性である場合の唯一の治療は手術による摘出です。
- 腫瘍の被膜に本体がありますが、周辺の組織に強固にくっついているため、全て取りきることは容易ではありません。この場合には、手術後に出る神経の症状を想定して、年齢を鑑みながら最適な摘出とする必要があります。
- 腫瘍はとてもゆっくりに大きくなるため、高齢である場合には必ずしも手術が必要となることはありません。逆に若い方であれば、症状がなくても手術を必要とする事があります。