- 全脳腫瘍の中では0.5%とされているとても珍しい良性腫瘍です。
- デルモイドと呼ばれる腫瘍です。
- 妊娠中5〜6週の間に神経が出来上がる前に皮膚組織の原基が迷入することで起こる先天的な病気になります。
- 毛包、汗腺および皮脂腺のような表皮付属物も含むところが、エピデルモイドと異なります。
- とてもゆっくり大きくなるため、症状が出て来るのは10歳~30歳の若い成人にみられます。
- 脳のどの部位にもできる腫瘍ですが、脳の正中部分に発生するものがもっとも多いです。
- のう胞の中身には皮脂や毛髪などを含みますが、腫瘍の本体は外側の上皮成分(皮ふ)のみです。
症状
腫瘍の増大に伴う症状
- 腫瘍が大きくなる事で頭痛、嘔吐
- 目が見えにくくなったり、二つに見える
- 顔面の麻痺
- 耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴り
のう胞内容物の破綻による症状
- 無菌性髄膜炎(のう胞の中身が外に漏れることで起こる髄膜炎)(aseptic meningitis )
- 頭痛、痙攣 などがあげられます。
診断
- MRIで診断をおこないますが、T1強調画像という撮影法では多くは内部のコレステロール成分が白く見えてきます。
- また、ガドリニウムを用いた造影MRIではまだらに造影され、壁が厚く造影されることがあります。
- MRI検査では、拡散強調画像MRIを行うことではっきりと腫瘍成分がわかります。
上の写真は頭痛で来られた患者さんのMRI面像です。左のT1強調MRI画像になりますが、内部に白く見えるところがあり、真ん中のT2強調画像のMRIではまだらに見えています。造影を行ったところ、(右図)壁が厚く造影されているのがわかります。この患者さんは脳の中にも大きく進展されていましたので、脳内の病変も含めて摘出を行いました。
上の2枚は術後の写真です。脳内病変も摘出できているのがわかります。
治療
- 腫瘍が大きくなり、症状が進行性である場合の唯一の治療はエピデルモイド同様に手術による摘出となります。
- 腫瘍の被膜に本体がありますが、周辺の組織に強固にくっついているため、全て取りきることは類表皮のう胞と同様に容易ではありません。
- 腫瘍はとてもゆっくりに大きくなるため、部分摘出にとどまった場合でも無理をせず経過をみていきます。