福岡県筑後市の脳神経外科・小児脳神経外科・リハビリ科の寺崎脳神経外科です。
6月4日、シカゴで行われましたASCO(アスコ:American Society of Clinical Oncology/米国臨床腫瘍学会)の年次総会にて、これまでに行なっていた再発膠芽腫に対するテーラーメイド型がんペプチドワクチン療法の臨床試験の結果について口演できる機会をいただきました。この臨床試験は2011年より国内多施設共同での医師主導型治験として行ってきたものです。ここにたどり着くことができましたのも、これまでにこの治療に期待して参加してくださった多くの患者さんやそのご家族、研究者の先生たがのお力添えがあってのことと本当に感謝していますm(_ _)m
本試験は実薬であるペプチドと偽薬であるプラセボ群を比較した第3相臨床試験という形で行われたものです。今回の報告ですが、主要評価項目としてあげていた全生存期間においてペプチド投与群と偽薬群とに統計学的な有意差は認められないという結果でしたが、試験の実施要項に従って行った解析において予後不良(それらがあると治療が効きにくい)となる因子を同定し、それら3つの予後不良となる因子を省いたサブ解析において全生存期間(11.2ヶ月 vs 5.3ヶ月)および1年生存率(43.9% vs 12.6%,)、いずれにおいても有意差を示すことができました。また、予後不良として上がっていた因子の中には実際に投与されていたペプチドワクチンが一つ入っていましたが、このワクチンがどうして働かなかったのか、を解析結果も合わせて報告してきました。
今回の口演は私にとってとても名誉なことです。しかしそれよりも、僕には実際にこの治療を笑顔で受けに来られてた患者さんたちの顔が今でもまぶたの裏に焼きついています。僕らが行っている臨床試験というものは今回のように数字で効果があったかないかを証明するほかありません。ですが、その数字一つ一つに確かに血が通っていたことを忘れないようにしないといけないと思っています。この難攻不落だった再発膠芽腫の扉をこの試験に参加・協力いただいた20施設の脳腫瘍医の先生がたと共にこじ開けられたことに誇りと喜びを感じざるを得ません。この場を借りて厚く御礼申し上げますm(_ _)m。私自身、開業医として微力ですがももう少しできることがありそうですので、もう少し頑張りたいと思っています。
よろしくお願いします。
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