- 以前は胎児性腫瘍に位置付けられている腫瘍でしたが、2016年の新たなの碓氷分類の改定に伴い診断名が削除された疾患です。
- 2016年の改定まで、髄芽腫が小脳から発生するのに対して、大脳から発生したものに対してPNET(ピーネット)と呼ばれていました。
- 大きくなる増殖能が高く、あっというまに増大します。
- また、髄芽腫と同じように、播種(脳脊髄液の中に散らばる)しやすい腫瘍であることも特徴となっています。
- これまで、PNETのタイプとしては下記の3つが含まれていました。
- 神経芽腫
- 上衣芽腫
- 松果体芽腫
- 2016年の改定では上衣芽腫とニューロピルと真性ロゼットに富む胎児性腫瘍を遺伝子変異から合わせて、多層性ロゼットを含む胎児性腫瘍(Embryonal tumour with multilayered rosettes;ETMR)という概念が提唱されました。
PNETという診断名はなくなりました。
- 分類不能な胎児性腫瘍は、CNS, Embryonal Tumor, NOSと記載され、混乱を避けるためPNET, NOSは使用しないことになっています。
症状
- 頭痛、吐き気 といった脳の圧があがることで出る症状、
- 失調性歩行といって、歩くときにふらつく症状やめまい、倦怠感といった腫瘍ができる場所による症状
- 播種があれば、背部痛や歩行障害、物が二重にみえる(複視)などの脳神経症状が認められます。
診断
- 画像検査:腫瘍のある場所や大きさを検査しますが、脳の圧が高くなっていないかや脳脊髄液の通り道がつまっていないか、など、その後の治療に影響がおよぶとても大事な検査になります。通常、MRI撮像にてガドリニウム造影を行うことで診断します。また、髄芽腫が疑われれば脊髄のMRIも必要となります。
- 脳脊髄液検査:スパイナルタップ(spinal tap)と呼ばれます。腰椎の間に細い穿刺針を刺して、ちょこっと脳脊髄液を採取する手法です。これで脳脊髄液中に腫瘍細胞がいないかどうかを判定します。画像であきらかに播種と判断できる場合には行いませんし、脳の圧が高いと判断される場合には逆に禁忌行為となるため、術中に採取することで代用されます。
上の写真は頭痛で来られた7歳の男の子のMRI面像です。左のT2強調画像という写真では左側頭葉に白くうつる大きな腫瘍がみられています。真ん中のMRI撮像法のガドリニウム造影という撮影法になりますが、中に点状に造影されている病変が散在してみられています。右の画像はDWIで内部に白く見える箇所があり悪性度が高いことが判断されます。
治療
- 治療の一歩はまず手術から始まります。
- 手術の目的は髄芽腫同様、 ①脳を圧迫している腫瘍を減圧 ②治療のための診断 ③治療効果のための細胞数を減らしておく、ことに主眼をおきます。
- 限りなく全摘出がもちろん望ましいのですが、仮に脳幹に浸潤しているからといって脳幹部分を無理に摘出する必要はありません。
放射線治療
- 放射線治療を含め、髄芽腫に準じて治療されることが多いです。
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化学療法
- 2018年現在、化学療法には現状で確立された標準となる治療レジメンはありません。
- 3歳未満の子どもの場合には放射線治療開始を遅らせる意味でも、化学療法のみで治療されることがあります。
- また、播種性の病変がある場合には、大量化学療法が用いられ多くは小児科での治療となります。