- 松果体というところにできるグレード1の松果体実質腫瘍です。
- 松果体はメラトニンという体内時計を調節するホルモンを分泌している脳の真ん中にある小さな組織です。
- MRI画像ではのう胞性として見えることもありますが、多くは充実性(固形)としてうつる成人に見られる腫瘍です。
- 松果体実質腫瘍の約3割を示しますが、多くは20代~30代の成人にみられる腫瘍です。
- 松果体細胞腫の症状には、頭痛や水頭症(水の通り道を閉塞するためにおこるもの)、上を向いた際に複視(物がダブって見える症状)などがみられます。
- 大きくなるにしても成長が遅く、また通常身体のほかの部位に転移はありません。
- 手術での摘出が必要ですが、自然経過にわからない点があるため年齢や症状を鑑みる必要があります。
症状
- 頭痛や水頭症(水の通り道を閉塞するためにおこるもの)からくる頭蓋内圧亢進症状(頭痛、吐き気) がみられることがあります。
- 上を向いた際に物がダブって見える眼球運動障害がでることがあります。
診断
- 画像検査:腫瘍のある場所や大きさを検査します。松果体のう胞と間違えられることもありますが、見なれていればMRI検査で比較的簡単に判断が可能です。
治療
- 腫瘍のサイズや症状がでているかどうか、で判断しますが、上にきさいしているように自然経過にわからない点もあるため年齢や症状を鑑みて手術を検討します。
- 手術が必要となった場合、経テント法による摘出術を行います。
- 開頭してする必要がないと判断できた場合には、通常は神経内視鏡を用いて第3脳室底部を開窓して経過を見ていくこともあります。
この患者さんは、50代の女性の患者さんです。しばらく外来で経過をみていましたが、腫瘍が大きくなりましたので経テント法にて全摘出を行いました。このくらいの大きさの患者さんは他にも外来で見ていますが、この年齢での増大は珍しいといえます。年齢や性別の好発は違っているものの、PPTIDと言われるグレード2の中間型も頭をよぎりましたが、組織はやはり松果体細胞腫でした。
予後
- 通常は手術後に再発することはありません。
- ただし、まれに松果体細胞腫からPPTIDへの悪性転化も報告されていますので、注意が必要です。
文献
- Moschovi M, Chrousos GP. Pineal Gland Masses. UpToDate. October 2013;
- Gaillard F, Jones J. Masses of the pineal region: clinical presentation and radiographic features. Postgraduate Medical Journal. 2010; 86:597-607.
- Dahiya S, Perry A. Pineal Tumors. Advances in Anatomic Pathology. 2010; 17:419-427.
- Bando T, Ueno Y, et.al. Therapeutic strategy for pineal parenchymal tumor of intermediate differentiation (PPTID): case report of PPTID with 1-7malignant transformation to pineocytoma with leptomeningeal dissemination 6 years after surgery. 2018; 20:201-7.