- 脳にあるグリア細胞が腫瘍化してできるものです。
- 小児にできる脳腫瘍の中でわずか6%程度と稀な腫瘍です。
- 年齢は5〜9歳に多く発生します。
- 多くは大脳半球に発生します。
主な症状
- 頭痛や吐き気
- 食欲低下、最近元気がない、よく寝るようになった
- てんかん発作
- 目が見えにくい
- 手足に力が入らない、しゃべりにくい など
診断
- 診断はMRIで比較的容易につけることができます。
- ガドリニウムという造影剤を使って撮影を行うことで、腫瘍辺縁が白く染まり、内部が黒く抜けてみえます。
- 成人に見られる画像と同じですので、こちらを参考にしてください。
遺伝分子生物学的に成人の膠芽腫とは全く異なるものです。
- ヒストンH3.3遺伝子の突然変異の頻度が高く、成人の神経膠腫でみられるIDH変異はまれです。
- 現時点でエピジェネティック(後天的に制御される遺伝子)的に4つのサブグループに分かれると考えています。
H3F3AのK27での突然変異
- 小児中期(年齢中央値は10歳)に多くみられます。
- 脳の正中構造(視床、脳幹、脊髄)に見られることが多いです。
- 予後は極めて不良です。
- 他にTP53の突然変異も多くみられます。
- 成人では視床というところにできる悪性神経膠腫でも認めることがあります。
H3F3AのG34での突然変異
- わりと年長の小児および若い成人(年齢中央値18歳)の方にみられます。
- 大脳皮質(脳の表面近いところ)に限局して発生します。
- TP53やATRXの変異も認められ、成人のびまん性星細胞腫に近い性質と思っています。
- ある程度予後は良好です。
BRAF V600Eの突然変異
- 広い年齢層で見られます。
- 多形黄色星細胞腫でも観察されます。
- 予後はある程度良好なものもありますが、悪性転化をしやすく、その場合、予後は不良となります。
RTK PDGFRAおよび間葉系サブタイプ
- 広い年齢層で見られます。
- 予後は不良です。
治療
- できるだけ摘出をします。
- 放射線治療は54〜60Gy(グレイ)で照射を行います。
- 化学療法の効果に関しては1990年代からいくつか議論されてきています。科学的に有効性が証明されているものや、探索されているものもあります。
テモダールは有効?
- 成人の膠芽腫の場合、放射線治療の際にテモダールを75mg/m2で併用して治療します。
- 小児膠芽腫の場合、テモダールを中心としたニトロソウレア系の抗がん剤の有効性は証明されていますので、成人同様、放射線治療に併用して用いられています。
- 最近の新しい研究でテモダールと併用した治療でこれまでの治療成績を上回るものが報告され期待されています。
小児膠芽腫の治療開発の歴史はまだ浅いものですが、最近の遺伝分子生物学研究を中心に大きく発展してくるのではないかと期待しています。
いつでもご相談下さい
- Schwartzentruber J et al. 2012
- Wu G et al. 2012
- Sturm D et al. 2012