- 原発性脳腫瘍の2-3%と言われていますが、胚細胞腫瘍の中では7割をしめ日本ではわりと多い腫瘍です。
- 若年者、特に中学生くらいに多く好発します。
- 松果体、鞍上部、他、基底核に発生します。
- 男女比は男性:女性2~2.5: 1となっていますが、発生頻度が部位によりすこし異なり松果体では男性>>女性、鞍上部では男女差なしとなっています。
- 腫瘍の性格は悪性ですが、ちゃんと治療ができていればほとんど治る腫瘍です。
症状
- 鞍上部病変にあるものは尿崩症(おしっこが止まらず、喉が渇く)が必発ですし、視力がおちることもあります。
- 基底核に病変があるものは認知機能や性格変化、手足に力が入らないなどの症状で発症します。
- 松果体部では、頭痛、嘔吐、めまい、目が上をむかない、などで発症します。
診断
- CTで軽度高吸収を示し白っぽくうつりますが、この腫瘍自体の放射線感受性が強く、後の診断や治療に影響が出ますので極力行わないようにします
- 通常、MRIでガドリニウム造影を行って診断がつきます。
上の写真は尿崩症で来られた13歳の男の子のMRI矢状断面像です。ガドリニウムを使って造影していますが、鞍上部(真ん中少し下に漏斗状に白く染まっている部位)と松果体(真ん中左に丸く染まっているところ)に腫瘍がみられています。
内視鏡で脳室内を観察すればわかりますが、脳室の壁にポコポコと小さな結節がみられることがあります。これは画像での診断は難しいんですが、上衣下浸潤(subependymal infiltration)という所見で播種(腫瘍が脳の水に散っている状態)とは異なる病態なので注意が必要です。
- 画像で胚腫が疑われれば、腫瘍マーカー(AFPとHCG-β)を調べます。
- また、鞍上部にあれば下垂体のホルモンなどの内分泌検査も行います。
治療
- 画像で診断が疑われれば、生検(ちょっと組織をとって確認する)手術を行います。通常は内視鏡を用いて前頭部に少しの切開で脳室の中に入り、腫瘍へ到達します。水頭症(脳に水がたまる病態)が一緒にあれば、この時に第3脳室底開窓術を行い、髄液(脳の水)の流れのバイパスを予め作っておきます。
大型の明るい胞体を持つ細胞とリンパ球様の小細胞が密に存在する、いわゆるtwo cell patternという所見が得られればあまり時間をおかずに化学療法を行います。
化学療法
- この疾患で通常使う化学療法はCARE(ケア)化学療法、もしくはICE(アイス)化学療法です。
- CARE化学療法:カルボプラチンとエトポシドを併用して点滴治療する化学療法です。通常は3日間の治療を行います。
- ICE化学療法:イフォスマイド、シスプラチン、エトポシドの3剤を5日間点滴治療する治療法です。
- この化学療法を3~4コース行いますが、通常はこの治療レジメンで開始していれば化学療法が終わる時点ではほとんど腫瘍は見えなくなっていることが多いです。
放射線治療
- もともとこの腫瘍は放射線感受性が高く、放射線治療は必須となります。むかし放射線のみで治療がなされていましたが、その副作用を下げるべく化学療法が導入されています。
- 放射線治療は原則、脳室をすべてカバーできる全脳室照射で行います。