- 聴神経の、めまいやフラツキの原因となる前庭神経から発生する腫瘍です。
- 原発性脳腫瘍の中の6%といわれていますので、比較的多い腫瘍になります。
- どの年齢でもできますが、特に30-60歳台に多くみられます。
- めまいはもちろんのこと、聴力低下、耳鳴り、顔面のしびれなどがみられます。
診断
- 診断はMRIで行いますが、小さなもの、特に内耳道内にとどまるものになると通常の撮影では診断が難しいことがあります。
- ガドリニウムという造影をMRIで行うことで、腫瘍がどこまで進展しているのかが判断できます。
- 約15%程度の患者さんでは、水頭症(脳の水をためておくところがおおきくなる)が認められることがありますが、多くの患者さん(6割)は脳脊髄液中のタンパク濃度が上昇することで認められる交通性水頭症と呼ばれる病態です。この患者さんはフラツキと難聴で受診された患者さんです。左の内耳道内および脳幹を圧迫している所見です。ここまで大きなものになると手術で摘出を行います。
大きくなる?小さくなる?
- 1340人を3年以上経過観察したところ、何かしらの治療が必要になったものは2割程度という報告や、1818人を4年程度経過をみたところ、3割が大きくなったという報告もありますが、大体3割程度と考えていいかと思います。
- 通常はゆっくり大きくなりますが(年に1-2mm程度)、常にということはなく、また自然退縮も10%程度にみられる腫瘍です。また、内耳道外のもののほうが、内耳道内にあるものより大きくなりやすい傾向も報告されています。
治療
- ↑に記載した一風変わった性格ゆえ、治療としては“watchful waiting”(何もせず経過を見る)、放射線治療、手術という選択肢になります。
- 抗がん剤は有効ではありません。
手術
- 手術は顔面神経を温存や聴力の温存するため、神経モニタリングを併用して行いますが、とても難しいものです。
- 顔面神経や聴神経はとても弱く、少しの損傷や術中操作で傷つきやすものだからです。
- 通常、外側後頭下開頭というアプローチで行います。これは、耳の後ろに切開をおいて行うものですが、開頭の際にもたくさん留意しないといけない点があります。
この患者さんは難聴で発症された患者さんです。もともと反対側の聴力がなく、腫瘍で聴力が悪くなっていましたので今回手術で摘出しました。
摘出後の写真です。顔面神経はモニターで確認しながら摘出を行なっています。この患者さんでは内耳道内にはほとんど入っていませんでしたので、内耳道はあまり削らすにすんでいますが、多くの場合、内耳道を削る必要がでてきます。