• 原発性脳腫瘍の中で最も多い腫瘍です。
  • 脳をおおう膜(髄膜)から発生します。
  • 30歳台-50歳台の女性に多いとされていますが、最近では高齢の方にも増えてきています。
  • 無症候性(症状のないもの)の方が6割と症状がなく偶然見つかることが多いものです。
  • 長い期間大きくならない患者さんも3割にみられます。
  • 大きくならないものには、画像でいくつかの特徴的所見がみられます。
  • 増大は年間に1-4mm程度です(増大には一定のリズムと法則があるので発育が止まることもあります)。

原因

  • これまでに40-80%の患者さんで染色体の22番に変異がみられることから、この変異によるがん抑制機構の破綻などが考えられていました。
  • 最近のもっとも新しい研究では、5つのグループに分けられることが示されています。
  • この中で衝撃的だったのは、生命の維持にとても重要なRNAポリメラーゼの構成成分POLR2A遺伝子にも変異があるグループがあることでした。この群では髄膜の発生に関わる二つの遺伝子(WNTとZIC)の発現異常が報告されています。
  • また、放射線治療歴乳がんの既往神経線維腫症2型(NF2)は、発生のリスク因子としてしられています。

症状

  • 発生した場所によってさまざまな症状がでます。
  • 頭痛手足のまひけいれん発作軽い認知のような症状(物忘れや人格変化など)ものが見えずらいといった症状が出ることもあります。

診断

  • CTやMRIという検査で判断できます。
  • 膜に沿って平らにのびていくen plaque (板状)髄膜腫とよばれるものはCTでの判断が困難です。
  • 造影をMRIで行えば、tail sign(尻尾サイン)と呼ばれる髄膜腫が硬膜に這う所見が観察されますので、より正確に診断ができることになります。

進行する認知症状で受診された患者さんです。左図はガドリニウムという造影を行った撮影ですが、腫瘍は前頭部にあって内部は不均一に造影されていますが、よく見ると腫瘍のはじに筆で引いた線のように見える部分があります(これがテールサインです)。右図はT2強調画像という撮影法になりますが、広範囲に脳が腫れているのがわかります。

治療は?

  • 手術での摘出が最も大切な治療となります。
  • ただ、上にも述べてますが、大きくなるものとそうでないものやできた場所によっては症状がなくても手術をしたほうがよいとされる場所もありますので、判断は慎重に行うことになります。
  • 放射線治療は手術で全て取り切れず大きくなるものや次に記載する悪性のものに対して有効だと考えています。

上の患者さんの手術後の写真です。この患者さんでは進行する神経の症状が腫瘍による脳の圧迫もしくは腫れの部分から出ていると判断され、腫瘍を摘出することで症状の改善が期待されるものと判断できましたので手術での摘出を行いました。手術後のMRIでは脳の腫れもすっかり消えていることがわかります。組織は非定型と呼ばれるものでしたが、完全に摘出できましたので認知症状も改善して現在も外来で経過をみています。

これは頭痛で受診された50代女性のガドリニウム造影を行ったMRI画像です。腫瘍は左側の横静脈洞S状静脈洞移行部にあって静脈洞が閉塞していましたので、静脈洞を腫瘍と一塊にして摘出を行いました。

手術後のガドリニウム造影を行ったMRI画像です。腫瘍は完全に摘出され、患者さんも現在元気に生活されています^^

悪性度は?

  • グレード1(定型もしくは良性):90%近くはこの部類に入ります。
  • グレード2(非定型):5-7%
  • グレード3(退形成性もしくは悪性):1-2%

髄膜腫ではこれまでのところ化学療法の有効性は立証されていません。しかし、↑に記載した5つのグループではそれぞれ特徴的な遺伝子発現を呈していて、これからより明確に治療個別化の戦略に向かうかと静観しています。

分からないことなどあれば、いつでもご相談ください。