成人神経膠腫(グリオーマ)の診断の項に記載しましたが、診断がついて治療を計画するうえで”IDHの変異”と”第1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失”の確認が必要となります。

  • 以前は低悪性(グレード2)と悪性(グレード3および4)と分類されていたものが、今回の新しいWHOの改定により、低度(IDH変異)と高度(IDH野生型)とに分類されることになりました。
  • 低度(Lower grade)といってもIDH変異のある患者さんですので、これまでグレード3と言われていた退形成性・・・・も含まれることになります。
  • また、第1染色体短腕と第19染色体長腕の欠失(1p/19qLOH)があることで治療の効果やその後の予後にまで違いが出てくることが分かっています。

グレード2における放射線治療

  • 通常、45Gy(グレイ:放射線の単位です)〜64Gy(グレイ)で照射を行います。
  • IDH変異がある方やハイリスクと判断された方にはテモダールやPCV(日本ではPAVという3剤併用となります)といった化学療法を併用して行います。

??IDH野生型の患者さんでは放射線単独?、線量は?どの化学療法?

??放射線治療を待機できる患者さんは?

グレード3における放射線治療

  • グレード4に準じて60Gy(グレイ)で照射を行います。
  • 第1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のある退形成性乏突起膠腫に対してはPCV化学療法を併用します。

??IDH野生型の患者さんでは放射線単独?、テモダール併用?

1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のあるLower grade

  • 退形成性乏突起膠腫の患者さんに対して行われた2つの大規模臨床試験(RTOG-9402とEORTC-26951)の結果、通常の放射線治療にPCV化学療法(乏突起膠腫に対して以前から用いられている化学療法です)の生存への上乗せ効果は認められませんでしたが、第1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のある患者さんに対してはPCV化学療法を併用した方がよいという結果でした。
    →現在テモダールとPCV化学療法のいずれが第1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のある患者さんに対してよいのか検証中です(CODEL Trial)

1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のないLower grade

  • では、第1染色体単腕と第19染色体長腕の欠失のない患者さんに対してどうなのか?というと、CATNON試験(EORTC26053-22054)ではテモダール維持療法を行った方がよいということは結果が出ており、放射線併用テモダール化学療法に関しては現在検証中となっていますが、他に行われた放射線+テモダールvsニトロソウレア剤(以前からこの腫瘍に用いられていた抗がん剤です)を検証したRTOG-9813という臨床試験の結果から放射線併用テモダール化学療法が標準治療という位置づけになっています。

     

ハイリスク星細胞腫

  • 以前グレード2といわれていた星細胞腫に対して、ハイリスクといわれる患者さんに対してRTOG-9802という大きな臨床試験が行われました。これは、放射線 vs 放射線+PCV化学療法を調べた試験で、当初PCV化学療法の上乗せ効果はないと報告されていましたが、その後6年の経過を追った最終報告で放射線+PCV化学療法のほうが、放射線治療単独に比べて有意に生存期間の延長が報告されており、標準的治療として術後放射線+PCV化学療法が位置づけられています。現在テモダールではどうなのかという臨床試験が行われています。

     

術後化学療法単独ではどうなのか?

  • これには放射線単独 vs テモダール療法単独(ただし、服用期間が3 wks-on/1 wk-offレジメン)を検証しているEORTC-22033-26033という臨床試験が行われていますが、現時点で以前言われていた低悪性神経膠腫に対して生存に有意差は出ておらず、寧ろIDH変異のある患者さんには放射線単独よりも生存期間が悪いという結果でした。

    現時点で特別な条件がない限り、術後テモダール単独治療はお勧めできるものではありません

  1. Backner JC et al. NEJM 2016
  2. Fisher et al. IJROBP 2015
  3. Baumert et al. Proc ASCO 2015
  4. van den bent et al. JCO 2013
  5. cairncross et al. JCO 2013