• 胎児性腫瘍に位置付けられている腫瘍で、2016年の新たな脳腫瘍分類の改定されましたが、その特徴的な神経管様の組織を有することから組織名が残された疾患です。
  • 染色体19q13.42領域上に存在するC19MC異常がなく、また他の遺伝学的な異常も見出されていない稀な疾患です。
  • 6か月から5歳までの子どもに多くみられる腫瘍ですが、稀に生下時よりみられることがあります。
  • 他の大事性腫瘍と同様に、大きくなる増殖能が高く、あっというまに増大します。
  • 大脳や脳幹、小脳、時に末梢神経にも発生することが知られています。

症状

  • 頭痛吐き気 といった脳の圧があがることで出る症状、
  • 失調性歩行といって、歩くときにふらつく症状やめまい、倦怠感といった腫瘍ができる場所による症状
  • けいれん発作 などがみられます。

診断

  • 画像検査:腫瘍のある場所や大きさを検査しますが、脳の圧が高くなっていないかや脳脊髄液の通り道がつまっていないか、など、その後の治療に影響がおよぶとても大事な検査になります。通常、MRI撮像にてガドリニウム造影を行うことで診断します。また、髄芽腫が疑われれば脊髄のMRIも必要となります。
  • 脳脊髄液検査スパイナルタップ(spinal tap)と呼ばれます。腰椎の間に細い穿刺針を刺して、ちょこっと脳脊髄液を採取する手法です。これで脳脊髄液中に腫瘍細胞がいないかどうかを判定します。画像であきらかに播種と判断できる場合には行いませんし、脳の圧が高いと判断される場合には逆に禁忌行為となるため、術中に採取することで代用されます。

上の写真はぐったりしているといった症状で来られた6か月の子のMRI面像です。MRI撮像法のガドリニウム造影という撮影法になりますが、小脳から発生し、脳幹まで白く浸潤している所見がみられます。

病理では好酸性の腫瘍細胞が腺管形成を伴い増殖しており、細胞の核はいびつで大小不同となっています。右の病理所見はビメンチン染色(神経管形成部分に染まります)が陽性所見となっています。

治療

  • 治療の一歩はまず手術で可能であれば全摘出を目指します。
  • 手術の後に放射線治療が必要となります。
  • また、転移している場合や播種(細胞が散らばっている)場合には、骨髄幹細胞移植をともなった大量化学療法を必要とします。

文献

  1. Molly PT, Yachnis AT, Rorke LB, et al. Central nervous system medulloepithelioma a series of eight cases including two arising in the pons. J Neurosurg 1996;84:430-6.
  2. Sundaram C, Vydehi BV, Reddy JJ, Reddy AK. Medulloepithelioma: A case report. Neurol India 2003;51:546-7.