• 悪性神経膠腫(悪性グリオーマ)で用いられる分子標的治療薬です。
  • 膠芽腫や退形成性神経膠腫で用いられます。
  • 血管新生という機序は、腫瘍が大きくなっていく際に必要とされるもので、脳腫瘍に限らずがんなどの悪性腫瘍でもみとめられるものです。血管の内皮細胞が進展・増殖していくことで新しい血管が進展していく状態のことをいいます。
  • アバスチンは、VEGFという腫瘍血管内皮細胞増殖因子の働きを抑える単クローン抗体です。
  • 悪性グリオーマでは、VEGFR2受容体を通してVEGFが発現していくことが知られています。
  • 膠芽腫では2009年に米国で再発膠芽腫に対して承認されました。

使いかた

  • 推奨されている投与方法は10mg/kgの量を2週間ごとに投与する方法です。
  • アバスチン自体に細胞を殺す効果がないため、他のがん腫では制がん剤と一緒に用いられますが、脳腫瘍では2018年時点で他の制がん剤との併用での有効性は証明されていません

2017年に報告された第3相臨床試験EORTC 26101の結果報告です。膠芽腫の再発に対してCCNU(ロムスチン)単独とアバスチン併用での比較がなされました。ロムスチン単独の無増悪生存期間は1.5ヶ月、ロムスチン+アバスチンでは4.2ヶ月と有意な結果となっていますが、生存期間の延長は認められませんでした。

効果や評価    

  • 治療による抗腫瘍効果にはとても慎重な判断が必要となります。
  • 脳は血液脳関門(B.B.B)によって守られている臓器ですが、悪性グリオーマではこのB.B.Bが破壊されており、そのためにMRIで造影病変として確認できますが、アバスチンはこのB.B.Bを回復されるため、一見すると造影されなくなっているように(腫瘍が小さくなっているように)誤認されやすいからです。
  • RANOという欧米のグループは、この画像評価でT2強調画像やFLAIR画像を用いることを推奨しています。
  • また、最近になって、放射線後にみられる壊死に対する有効性も報告がなされています。とても大事な報告ですが、現時点ではその投与量や期間など、一定の見解が出ていないのが現状となっています。

小児脳腫瘍ではどうか?    

初発高悪性度グリオーマでの効果は限定的

2018年に報告された3歳から18歳までの小児の初発高悪性度グリオーマ患者さん121名を対象としたHERBY trialの結果です。放射線+テモゾロマイド治療群でのEFS(無イベント生存期間)は11.8ヶ月、アバスチンを上乗せした場合は8.2ヶ月という結果で、アバスチンを加えた方が悪くなるような結果で、しかも尿蛋白や血栓症といった副作用での治療中止例が増えています。

また、その後の後解析では高頻度に遺伝子変異がある群と多形黄色星細胞腫にみられるようなBRAF V600Eの突然変異をもつ群が比較的予後が良いという結果が得られています。

再発低悪性度グリオーマでの効果は期待?

2014年に報告された7か月から18歳までの小児の低悪性度グリオーマ患者さん35名を対象とした第2相試験の結果です。 Pediatric Brain Tumor Consortium studyという北米の小児脳腫瘍治療グループから報告されたものです。全例ですでに初発時に制がん剤での治療が行われていました。治療は通常のアバスチンに加え、CPT-11を上乗せした治療が2年間行われています。結果、中央値で40か月の腫瘍安定(大きくも小さくもならない)期間が得られており、標準治療で再発された場合の治療として期待されるものとなっています。

副作用

  • 副作用で主なものは出血(頭蓋内や全身)、血栓症、高血圧、創傷治癒遅延などです。
  • 出血は5%前後とされていますが、頭蓋内の出血は約3%と言われています。
  • 虚血性心疾患心筋虚血消化管穿孔白質脳症蛋白尿、など、頻度は2%以下でも、出ると重篤なものもありますので注意が必要です。

文献

  1. Wick W, et al. Lomustine and Bevacizumab in Progressive Glioblastoma.
    N Engl J Med. 2017 Nov 16;377(20):1954-1963.
  2. Grill J, et al. Phase II, Open-Label, Randomized, Multicenter Trial (HERBY) of Bevacizumab in Pediatric Patients With Newly Diagnosed High-Grade GliomaJ Clin Oncol. 2018 May 14;33(5):829-842.e5.
  3. Mackay A, et al. Molecular, Pathological, Radiological, and Immune Profiling of Non-brainstem Pediatric High-Grade Glioma from the HERBY Phase II Randomized Trial.
    Cancer Cell.  2018 May 14;33(5):829-842.e5.
  4. Gururangan S, et al. Efficacy of bevacizumab plus irinotecan in children with recurrent
    low-grade gliomas—a Pediatric Brain Tumor Consortium study. Neuro-Oncology 2014 16(2), 310 –317.