- 子どもの脳腫瘍の項で記載していますが、そのほとんどは赤ちゃんから小児までで多くでみられる腫瘍ですが、稀に成人の高齢者にもみられることがあります。
- グレード1に分類される良性の経過をたどる腫瘍となっています。
- 年間での発症率は2.9-4.8例/100万人あたり と稀な腫瘍です。
- 大脳、小脳、脳幹、視床下部や視神経に発生します。できる場所によって症状は異なりますが、
- 大脳にできるものは、けいれん発作や手足のまひ
- 小脳では頭痛、嘔吐、フラツキや意識障害
- 脳幹ではものが二つに見える
- 視神経では目がみえなくなったり といった症状で発症されます。
診断
- 症状や経過をから疑われればガドリニウムという造影剤を用いたMRIで診断できます。
73歳の男性で耳鳴りと耳の聞こえが悪くなったことを主訴に受診された患者さんです。年齢がいくとよくある症状ですので、数年放置をされてあったようです。左のMRIでは真ん中左側(小脳脚)に周りの脳を圧迫することなく限局しているのがわかります。右のMRIはガドリニウムという造影を行ったものですが、腫瘍の前方に一部造影されているところがみてとれます。
開頭してちょこっとだけ組織をとる生検術というものを行い診断を行いました。病理組織標本では紡錘形細胞の周りに好酸性(べたっとしたピンク色の組織)のローゼンタール線維が認められており、毛様細胞性星細胞腫の診断となります。
治療
- 小児の場合と同様に、手術で完全に摘出できれば治る腫瘍です。
- 通常は高齢者の成人の場合、退化しているものが多く、治療の対象となることは少なくありません。
- 上記のような症例のほうが稀といえます。
化学療法
- 増大したり症状を呈するものの場合には、白金製剤とビンクリスチンという2薬剤を用いる治療が第一選択治療となります。
- ただ、この治療で完全に腫瘍を消失できることはほとんどなく、治療の主眼を別のところにおいている治療となっています。ですので、年齢や現状の生活レベルを考慮しながらどこで効いて、どこまで効くのかを最初に考えて治療を導入することになります。
- 通常使われる化学療法としては1回の投与量が低く設定してありますので、外来でもできる治療となっています。私自身、現在外来でもこの治療を行っています。
放射線治療
- 放射線治療は年齢、場所を考慮して、どうしても必要な場合にのみ行います。
- 通常は分割して40Gy(グレイ:放射線の治療単位です)~を目安に治療を行います。
文献
- Cyrine S, Sonia A., et.al. Pilocytic astrocytoma: a retrospective study of 32 cases. Clin neurol Neurosurg. 2013; 115:1220-1225