- 近年のMRIやCTの普及に伴い、偶然見つかることの多くなった腫瘍です。
- 全世界人口の0.5%全脳腫瘍の中では0.5%とされています。
- 正確には腫瘍ではなく、拡張や怒張したり、形が不規則となった小さな毛細血管の集合体からなる血管奇形です。
- 正常の血管構造と異なっているため、壁が薄く破れやすくなっており、そのために出血を繰り返しながら大きくなります。
- 遺伝性のある家族性のものと、遺伝性のない孤発性にできるものとがあります。
症状
25%の患者さんは無症状です
残る3/4の患者さんにできた部位、出血や浮腫(周囲が腫れる)によって症状がでてきます。
- 頭痛、けいれん
- 運動麻痺(手足が動かない)
- 視力低下(目が見えない)
- 聴力低下(聞こえが悪い) といった症状です
家族性海綿状血管腫
原因遺伝子
今のところKRIT1(CCM1)遺伝子、CCM2遺伝子、PDCD10(CCM3)遺伝子の3つの遺伝子変異が確認されています。
- 遺伝形式は常染色体優性遺伝(例えば父方の遺伝子に強力な発現力を持つ疾患遺伝子が存在すると、母方のペアとなる遺伝子の発現は正常に働かず、父方の疾患遺伝子が優位に発現する遺伝)で発病します
- 85%~95%の家族性海綿状血管腫の患者さんでこれら遺伝子の変異がみつかっています。
- 残る5%~15%の患者さんは原因がわかっていません。
- また、孤発性に発生した海綿状血管腫の患者さんには関連がないことがわかっています。
上の2枚の画像はいずれもT2*(ティーツースター)と言うMRI画像になります。普段、なんの障害もなく普通にくらいしている男の子です。このような家族性多発性海綿状血管腫の患者さんは,小さな出血など生じても安易に手術を受ける必要はありません。どの血管腫が大きくなって出血をして行くのかはわかっていません。
診断
- MRIで診断ができます。
- ガドリニウムを用いた造影MRIでは線状に造影される静脈性血管腫の合併が確認できることがありますので、造影でのMRI検査も必要となります。
上の左の写真は頭痛を主訴に症状で来られた30歳代の男性の患者さんのMRI面像です。左のT2強調MRI画像になりますが、左の側頭葉内に黒くみえているものが海綿状血管腫です。右のT2強調画像のMRI画像は摘出後の画像です。
上の写真はものが見えにくいといった症状で来られた50歳代の女性の患者さんのMRI面像です。左のT2強調MRI画像になりますが、右の視神経を押して丸くみえているものが海綿状血管腫です。右のT2強調画像のMRI画像では内部がまだらに見えていて、眼窩内にあることがわかります。画像上、一見三叉神経鞘腫を疑うような画像となっています。この患者さんは視力低下と複視(ものが二つに見える)症状がありあしたので、摘出を行いました。
上の患者さんは複視(物がダブって見える)症状を主訴に受診された40台の患者さんです。左の画像が術前になりますが、左の視神経を圧迫するように腫瘍がみられています。この患者さんも摘出を行っています。右のMRI画像が手術後のもの人ありますが、視神経がまっすぐ元に戻っているのがわかります。
治療
- ほとんどの無症状であるものは経過観察を行います。
- 出血をしているからといって、あわてて手術をする必要はありません。
- 経過を見ていて、大きくなるものやてんかんの原因となっているものに対しては手術で摘出を行います。
- 放射線治療は効果が期待できませんので行いません。