• 赤ちゃんから子ども、20歳まで幅広い年齢で見られる腫瘍です。
  • 脳腫瘍全体から言えばそうでもありませんが、この頃におこる脳腫瘍の中では15%と比較的多い腫瘍です。
  • 大脳小脳脳幹視床下部視神経に発生します。できる場所によって症状は異なりますが、
    • 大脳にできるものは、けいれん発作手足のまひ
    • 小脳では頭痛嘔吐フラツキ意識障害
    • 脳幹ではものが二つに見える
    • 視神経では目がみえなくなったり   といった症状で発症されます。

診断

  • 症状や経過をから疑われればガドリニウムという造影剤を用いたMRIで診断できます。

5歳の子で頭痛と嘔吐を主訴に受診された患者さんです。この年代の子たちは初期に嘔吐下痢と診断されて様子をみられることも多く、診断のときにはすでに少し大きくなっていることがあります。矢状断面(脳を横から見る撮影法です)のMRIでは真ん中左側(小脳)にいびつに白く染まる腫瘍がわかりますが、その外側に風船のように線状に造影されているところまでが腫瘍です。

この子は2ヵ月の経過で視力が 低下して受診されたお子さんです。同じく矢状断面撮影のMRIになりますが、真ん中少し下にある白い塊が視神経にある腫瘍になります。他にこの子は播種(腫瘍がちっている)所見が見られていますが、視床下部が原発だと判断でき、画像のみで診断ができる所見です。

治療

  • 手術で完全に摘出できれば治る腫瘍ですので、できた場所によっても治療は異なります。特に大脳や小脳の表面にできたものでは完全摘出に向かいます。
  • ↑の写真の2番目の子のように視神経にできているものや、播種しているもの、脳幹に出いている場合など、手術のリスクがたかいと判断されれば化学療法で治療を行いますが、化学療法で小さくしてその後手術で完全に摘出できると判断されれば手術にむかうこともあります(second look surgery:セカンドルックサージェリーといいます)。

11歳になる男の子で、左の運動麻痺にて受診された患者さんです。左のMRI造影画像では右の視床という場所に一部のう胞性の腫瘍が認められています。真ん中のMRI画像は運動神経線維がどこにそうこうしているかを見たものですが、腫瘍によって上方のほうへずれていることがわかります。この子の場合も摘出を行っていますが、現在のMRI画像でも(右)再発なく元気にされています。

化学療法

  • この腫瘍に対する化学療法の有効性は広く知られているものがあります。
  • ちょっと詳しくなりますが、白金製剤ビンクリスチンという2薬剤を用いる治療が第一選択治療となります。
  • ただ、この治療で完全に腫瘍を消失できることはほとんどなく、治療の主眼を別のところにおいている治療となっています。ですので、どこで効いて、どこまで効くのかを最初に考えて治療を導入することになります。
  • 通常使われる化学療法としては1回の投与量が低く設定してありますので、外来でもできる治療となっています。私自身、現在外来でもこの治療を行っています。
  • 副作用は血液のことやアレルギーのことなど色々ありますので、外来できいてもらえればと思います。

これは↑に出した2番目の子の化学療法後の写真です。治療前のMRIと比べると、視神経のところだけでなく、散っていた腫瘍にも効果が出ていることが分かります。

放射線治療

  • 僕の外来に、定位放射線治療外科で治療後再発して受診される患者さんもいますが、腫瘍の性格上、この治療は特定の再発形式や部位でないとあいません。
  • 通常は分割して40Gy(グレイ:放射線の治療単位です)~を目安に治療を行います。